レンタル方式が注目されるのは、稼働件数に応じて更新が可能で、機能的に陳腐化した機器の導入もスムーズというメリットがあるからだ。
諸外国ではCT・MRI搭載車が病院に参横付けして、レンタルサービスを提供する。
いわゆる「医療モバイル」が、わが国にもやってくるかもしれない。
この他、最近医療界で注目されているのが、迅速検査の導入によって受診回数を削減する方法である。
その一つが、技術革新が著しい検体検査分野において開発された心不全の診断マーカー。
盟らによればこの迅速検査を保険導入すれば、外来で実施している58%の心エコー検査が節約できるという。
さらに、早期発見・早期治療で13%の新入院が回避され、入院患者の平均在院日数も21%短縮可能なことを同氏は明らかにした。
ちなみに、米国では、心不全による入院患者の5%がICU、13%がリカバリー室、72%が一般病棟を利用しているという。
このマーカーは、筆者のロビーが奏効したのか、07年6月1日に140点で保険適用された。
これらの結果をわが国の状況にあてはめると、3・4円という医療費削減効果が算出される。
確かに約4000億円の検査市場から見れば0・1%にも満たない少率だが、検査の迅速化と医療費の節約の同時達成が可能になれば、患者に負荷をかけずに通院・入院回数を減らすことができるのではないだろうか。
奇しくも、リウマチ登録医約4000人で組織する日本リウマチ財団の医療保険委員会は、厚労省に要望書を提出した。
これは、リウマチの早期診断が可能な複数検査項目を同時算定できるよう認めることなど、緊急是正を求めたものである(07年6月21日のメディファックス)。
同要望書では、リウマチ患者の早期発見、患者負担の軽減を図るためには、現行の一回の受診で検査一項目というシバリの撤廃を求めている。
現在、保険適用の検査はRF因子、リウマチの関節炎診断のMMPl3(マトリックスメタロプロテァーゼ3)検査と、07年4月に保険適用となった免疫異常の指標である抗CCP抗体。
08年度診療報酬改定において、各項目の特性からMMPl3検査とRF因子のコンビネーション検査、MMPl3検査と抗CCP抗体検査のコンビネーション、3項目の同時算定を求めていたが、2つまでOKとなった。
一歩前進だが、これが一回で算定できれば、患者にとって再診回数の減少など負担軽減につながるのではないか。
ちなみに、リウマチ患者は全国で70万人といわれる。
確かに、わが国の医療界は安い医療費を医師の自己犠牲と薬価差益で賄ってきた面はある。
しかし、産業界の英知を結集すればまだまだ「ムリ、ムダ、ムラ」は排除できるのではないだろうか。
わが国の高齢化のスピードや今の財政状況を考えると、今後は医療を提供する側も構造改革が求められる。
その場合のキーワードは「医療の質の向上と効率化の同時達成」である。
一般に、医療にかけるコストと、年齢や合併症などのリスク調整後の死亡率とは、トレードオフ(反比例)の関係にあるとされる。
しかし、現実には同じコストでも死亡率にバラツキがある。
逆に同じ死亡率を達成するのに要するコストにもバラツキがある。
世界に冠たる自動車工場をつくり上げたトヨタでは、これを「見える化」という。
この考え方を医療界に導入すると、例えば心血管疾患では、一見すると死亡率の低い病院では入院中の医療費が一局くなることがわかる。
しかし、この図をもって「良質な医療を提供するには相応の費用がかかる」とするのは早計だ。
というのは非効率な医療供給により見かけ上のトレードオフが生じているかもしれないからである。
むしろ、ここで注意すべきは、A、B、C病院はE、J病院に比べて死亡率はあまり変わらないが、約50〜100万円以上の医療費をかけているという事実。
これは裏返せば、全国の急性期病院が比較的安い医療費でそれなりの実績を上げることができるではないか。
それにしても、どうしてこんなに病院格差があるのだろう。
実は医師でもない筆者らが「医療の見える化」を始めたのは、同じ疾患でも手技の選択により死亡率などに大きな違いがあることがわかったからだ。
運不運で自らの命が決まるとしたら、強制的に医療保険料を払わされている国民は、たまったものではない。
それでは、大学病院と一般病院のどちらがうまいのだろうか。
症例数が多いほうが治療成績はよいのだろうか。
そもそも医療の質や医療成績のバラツキを決定する要因はあるのだろうか。
そして、医療の質の向上に必要な「打ち手」とは何だろうか。
こんなことを言うと、一般読者は「おや?」と思うかもしれない。
わが国でも品質向上と効率化の同時達成を実施している医療機関には一定の経済的インセンティブを付与してもよいのではないか。
そこで筆者らが中心になって、勝手連の立場で05年7月2日に「病院可視化ネットワーク」を立ち上げた。
幸い全国13病院から計4万4000件のデータ提供を受け、患者の医療機関の選択、重症度・合併症、治療プロセス、医師の技術、他の臨床医の技術、病院・組織の技術、医療成果の観点から分析を行った。
その結果、例えば心血管疾患の場合、内科医が行う経皮的処置と外科医が行なうバイパス手術についてリスク調整後の死亡率を求めると、L病院はPCI、CABGともに死亡率は8倍にも達していた。
マスコミによく登場する有名な病院だが、なぜか心血管疾患の死亡率は高い。
リスク調整とは、患者の属性や重症度を調整したうえで、病院ごとに医療成果(院内死亡率、治癒・軽快、後遺症の発生)がどの程度異なるかを計測することを指す。
リスク・ファクターとしては、病院から回収したDPC関連データを活用して、次のような項目を選択した。
つまり、重症患者は死亡リスクが高いので、そうした要素を調整したというわけだ。
なぜDPCデータを使用したかと言えば、1400を超える病院がこのデータを厚労省に提出しているからだ。
つまり、国は200万を超える患者データを保有しているが、有効に使っていないのだ。
これを「不作為」と呼ばずに何というのだろう。
情報公開法を使ってそのデータの入手を試みたが、個人情報保護法を理由に断られた。
しかし、患者データは病院が国に提出する段階で既に匿名化されており、何の問題もないはずだ。
厚労省は医療の実態を白日の下にさらすと、年金記録や薬害肝炎患者のデータ消失と同様、責任問題に発展するので、「見える化」したくないのだろう。
臨床現場から見て、こうも多くのピンボケの医療政策が多いのはこのためだ。
厚労省の最大の悲劇は、医療界全体を烏撤するデータベースを持っていないことである。
「患者調査」、「医療施設調査・病院報告」、「社会医療行為別調査」など、行政統計はあるが、どれも断片的な集計データで、とても分析に使えるものではない。
これでは、今、どのような医療機関にどのような医師が何人いて、どのような患者にいかなる診断・治療が行われ、どれほどの成果を上げているのかがまったくわからない。
そこで、厚生労働大臣に対する世直し提言を目指し、病院が汗水垂らして国に提出しているデータを研究目的でお借りした次第である。
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